あなたは乳腺症を知っていますか?
乳腺症はいわゆる良性の疾患です。
乳房に違和感を感じて病院を受診した人が乳腺症と診断されることも珍しくありません。
しかし、乳房にしこりがあることに気づいたとしても、乳腺症なのか悪性の腫瘍なのかを自分で判断するのは難しいですよね。
そこで、今回は乳腺症のしこりの特徴や痛み、しこりが大きくなることはあるのかなどについて解説します。
目次
乳腺症とは?
乳腺症は中年女性に多くみられる良性疾患のひとつです。
乳がん検診で見つかるほか、乳房にしこりがあることに気づいた人が産婦人科を受診することによって見つかることがあります。
乳腺症は女性ホルモンとの関係が深いと言われており、性ホルモンの働きが乳腺の生理的変化に関連しています。
主な自覚症状として乳頭から分泌液が出てきたり、乳腺に痛みを感じる、乳房にコリコリとしたしこりができていることが挙げられます。
これらは乳がんでも見られる症状ですので、病院ではまず初めに乳がん検査が行われます。
医師も一番に乳がんを疑うからです。
乳がんの検査で陽性の結果が出れば乳がんを発症していることになりますが、陰性の場合は乳がんではありません。
しかし、乳腺に上記の症状が出ており正常の状態ではないことから、正常乳腺と区別をつけるために所見では消去法を用いて「乳腺症」と診断するのです。
乳腺症は正常な範囲内の状態で診断されることもあり、乳腺症=病気という訳ではありません。
その後、乳がんの検査結果を基にしながらさらに超音波検査など必要な検査を行い、それでも癌の可能性が無いと判断した場合には改めて乳腺症と診断されます。
乳がんやその他の病気・疾患と区別するために「乳腺症」と診断される場合も多く、乳腺症の定義は明確ではないのが現状です。
診察をする医師によっても、乳腺症と判断するかどうかには差がありますので、かかりつけの病院では乳腺症と診断され、また別の病院では乳腺症と診断されないこともあります。
一口に乳腺症と言っても症状には個人差があるため、原因を追究したいという人は専門の病院で詳しく検査をしてもらうことをおすすめします。
乳腺症のしこりの特徴は?
乳腺症の症状のひとつに「しこり」があります。
そして、しこりは乳がんの症状にもあります。
しこりは触ると誰でも分かるため、乳房にあるしこりに気づいたとき多くの人は「乳がんかもしれない・・・」と心配になることでしょう。
乳腺症のしこりの特徴は、「しこりが柔らかく痛みを伴うこと」です。
乳腺症は月経の周期が大きく関係しているため、生理前になると痛みが大きくなります。
また、乳腺症に見られるしこりは触ると表面がつるつるしていて弾力があります。
一方で、乳がんに見られるしこりは痛みを伴いません。
また、乳腺症のしこりが柔らかいのに対し、乳がんのしこりは非常に硬いです。
触るとくるみのようにザラザラとしているため、乳腺症のしこりの特徴と大きく異なります。
乳房にしこりを見つけた場合には、しこりを触ったときに痛みを感じるかを確認しましょう。
そして触ったときに柔らかいか硬いかによってなんとなく分かるはずです。
ただし、乳がんの初期の段階では自分では判断できないことも多く、痛みを伴っているにも関わらず乳がんであったという場合もあります。
手遅れにならないためにも、違和感を感じたらすぐに病院を受診して医師に相談するようにしましょう。
しこりは大きくなるの?
乳腺症のような良性のしこりであっても、大きくなることがあります。
悪性の腫瘍だけが大きくなるわけではないのです。
また、しこりが大きくなっているからと言って、乳腺症だと診断された良性のしこりが悪性に変わることはないと言われています。
病院で乳腺症と診断された小さいしこりの多くは経過観察とされ、数か月~半年ごとに診察をします。
しこりが大きく成長している場合には、しこりの状態にもよりますが切除を進められることもあります。
なお、しこりが急激に成長している場合は、乳腺症ではなく、線維腺腫(せんいせんしゅ)、葉状腫瘍(ようじょうしゅよう) を発症している可能性があります。
気になる人は早めに医師に相談することをおすすめします。
繊維腺腫とは?
繊維腺腫とは、乳房にしこりができる病気です。
特に10代~20代の女性に見られます。
しこりがよく動くのが特徴ですが、繊維腺腫のしこりは腫瘍ではありません。
繊維腺腫のしこりは正常な細胞が増えてできたもので、3センチ以下の場合は治療は必要ありません。
また、しこりが3センチ以上の大きさになることはないと言われており、中には経過観察の段階で自然に小さくなっていくこともあります。
ただし、しこりの大きさが3センチを超えていたり、年齢が30代後半~40代である場合には乳がんや葉状腫瘍の可能性もあります。
さらに、ごく稀ですが繊維腺腫が癌化することもあります。
触診や超音波検査だけでなく、細胞診を受けるようにしましょう。
細胞診の検査を受けることで、悪性であるかどうかを99%の確率で判断できます。
葉状腫瘍とは?
葉状腫瘍とは、短期間のうちにしこりが大きく成長するのが特徴の病気です。
葉状腫瘍の5%以上は良性ですが、10~25%が悪性の腫瘍に分類されます。
さらに良性の腫瘍が悪性化することもあります。
そして、悪性の場合は他の臓器へ転移することがあります。
葉状腫瘍の遠隔転移は肺が最も多いと言われており、その確率は13~40%です。
繊維腺腫のしこりが癌化することはごく稀ですが、葉状腫瘍は癌と同様に手術をしても再発しやすいという特徴があります。
マンモグラフィや超音波検査で葉状腫瘍が良性か悪性であるかを判断するのは極めて難しいため、針生検(組織診)によって検査が行われます。
もしもしこりがどんどん大きくなっている場合には、早めに病院を受診しましょう。
悪性の腫瘍で症状が悪化している場合には乳房全摘出を勧められることがありますので、早期発見が何よりも大切です。
痛みは強くなるの?
乳腺症は女性ホルモンの影響を大きく受けますので、生理が近づくにつれて痛みが増し、生理が終わると痛みも和らぎます。
生理前に胸が張って痛くなるのも乳腺症の症状のひとつです。
とはいえ、乳腺症は病気ではありません。
したがって、胸が張ったり生理前に痛みが伴うからといって特に治療は必要ありません。
痛みの強さにも個人差がありますが、鎮痛剤を飲まなければ耐えられないほどの痛みを伴うようであれば一度病院を受診しましょう。
また、生理周期に関係なく痛みが続くようであれば乳腺症以外の病気の可能性があります。
この場合も早めに病院を受診してください。
乳腺症を予防するには?
乳腺症は閉経を迎えるまで多くの女性が付き合っていかなければならない疾患です。
女性ホルモンを正常に保つためにも、バランスの整った食生活を心掛けましょう。
食生活では、豆腐や納豆などの大豆製品を意識して摂取することをおすすめします。
大豆にはイソフラボンが多く含まれており、女性ホルモンの働きをサポートしてくれる効果が期待できます。
また、カルシウムが多く含まれている小魚や乳製品もおすすめです。
そして、食生活の改善はもちろん、規則正しい生活を送ってホルモンバランスを乱さないことが大切です。
乳がん検診は定期的に受け、自宅でも乳房の形を定期的にチェックしましょう。
触ったり目で見たときに少しでも異変があれば、すぐに医師に相談してください。
乳腺症や葉状腫瘍、乳がんの予防につながります。
乳腺症と上手に付き合いましょう。
閉経を迎えるまで多くの女性が乳腺症と付き合い続けなければなりません。
しかし、乳腺症は病気ではありませんので、病院で乳腺症と診断されたからと言って恐れる心配はありません。
日ごろの食生活に気を付け、規則正しい生活を送ってホルモンバランスを保つことが大切です。
そして定期的に乳がん検診を受け、健康を維持するように心掛けましょう。
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